FDA査察準備

FDA QSRへの準拠率の平均は20%

クオリス・イノーバが行ってきたGAP監査(*1)では、企業のFDA QSRへの準拠率の平均が20%と、現状は30%にも達していません。

多くの企業は、ISO認証を長年維持していることで満足してしまい、医療機器開発の本質を理解できていないことが原因として考えられます。この数値は、ISOの基準にすら達していないレベルであり、最悪の場合、FDAからウォーニングレター(*2)を受ける可能性があります。

企業にとって自社の現状を把握し、社員全員がその問題を認識することは、査察準備において重要なステップです。

しかし、課題を数値化しなければ、その深刻さが理解しにくいのも事実です。

準拠率をアップするためには、FDA査察の豊富な経験を活かした適切な監査チェックリストと、医療機器開発のライフサイクル全般にわたる深い知識を持つ、経験豊富な監査員による分析が必要です。

 

  1. GAP監査:ISO と FDA品質システム規制 QSR とのギャップを確認する監査のこと。
  2. ウォーニングレター:査察終了後、QSR に準拠していないと判断した場合に出される警告書

 

 

ISO監査とFDA査察の違い

アメリカへ医療機器を輸出している、もしくは輸出を検討している企業にとって、FDAの査察は避けられない検査です。

「ISO監査」と「FDA査察」には、次のような違いがあります。
 

  ISO監査 FDA査察
実施主体 ISO認証機関 または
内部監査員
アメリカ食品医薬品局(FDA)
目的 規格に基づいた品質マネジメントシステムの運用確認 法規制への適合性と患者・消費者の安全性の確認
法的罰則 法的拘束力はない 違反があれば行政処分や輸入停止もあり得る
結果の影響 認証維持・顧客信用に影響 輸入差し止め、製品リコール、警告書、訴訟など



FDAの査察で問題を指摘され、それに適切な対応ができなかった場合には、輸入が差し止められたり、警告書(Warning Letter)や業務停止命令が出されたりする可能性もあり得ます。

実際、2011年3月、日本の大手医療機器メーカーが医療機器の一部販売停止と制裁金28億円の支払に合意しています。

一方、国際規格に適合しているかを確認する「ISO監査」は、不適合が多数あった場合には改善勧告や認証停止のリスクはありますが、法的罰則はありません。 

FDAはアメリカ国民の健康と安全を守るために、アメリカ政府の資金で査察官を派遣し、規制遵守を厳しくチェックします。その目的と性質がISO監査とは根本的に異なるため、適切な準備と対応が必要です。

FDAが重視していること

FDA査察を単なる形式的な審査ではありません。

たとえば、「査察にパスできればいい」「ISOとの違いが分かれば十分」と考えているケースや、「リスクの低いデバイスだから問題ない」と安心しているケースを見かけることがあります。

しかし、ISOの品質システム認証を取得しているからといって、FDAの査察を問題なく通過できるとは限りません。

実際に公平な視点で監査を行うと、どの機関で認証を取得したのか聞きたくなるような状況も珍しくありません。これは、ISO認証を持っていることが、品質の高さを保証するわけでないということを示しています。

FDAは、「品質管理が適切に行われているか」という点をもっとも重視しています。
この質問に対し、自信をもって「Yes」と答えられる状態にしておく必要があります。
 

 本来、医療機器は人命を救うために開発されるものですが、品質管理が不十分だと逆に命を危険にさらす可能性さえあります。
規制に適合しているから問題ない、という考え方は自己責任を放棄しているようにも聞こえます。

患者を守るため、そして企業を守るためにも、すべての活動は根拠に基づくエビデンスによって保証されるべきです。そのためには、医療機器に関わるすべての社員が規制の理解だけでなく、医療機器開発の本質を深く理解する必要があります。

医療機器の不具合による事故が発生し、企業の経営陣が国民の前で謝罪会見を開くような事態になってからでは遅いのです。尊い命を守るためにも、企業が破綻する前に品質管理の本質を理解し、適切な対応を取ることが求められます。

ISOとQMSRの違い

2026年2月2日に施行されたFDAの新しい規制であるQMSRは、国際規格ISO 13485:2016をそのまま参照して組み込む(Incorporation by Reference)形をとっているため、基本的なQMSの構造や要求事項は実質的に統一されました。しかし、米国連邦法(FD&C法)との整合性を保つため、以下の点がISO 13485とは異なる「追加・明確化事項」として規定されています。
 

用語の定義:「医療機器」、「ラベリング」などの用語は、ISOの定義よりもFDAの法令上の定義が優先されます。

記録の管理:記録への署名・日付の要件や、苦情・サービスの記録に関するFDA固有の要求が残ります。

トレーサビリティ:特定のインプラント機器等に対する追跡管理(トラッキング)の要求が追加されています。

関連規制との連携 ( OAFR ):MDR(有害事象報告)やリコール(修正・回収)など、他のFDA規制(Part 803/806)とのリンクが必須です。
 

つまり、ISO 13485に適合している組織でも、これらFDA特有の追加要件への対応がコンプライアンスの鍵となります。

また、FDAは従来の査察プログラムを新たな査察プログラムにQMSR施行に合わせて変更しました。これによると、


・規制の習熟度:要員に対する規制の習熟度を問われます(教育、訓練のエビデンス)

・リスクマネジメント:ライフサイクルでリスクマネジメントを稼働、かつ関連するプロセスと連携させているかが問われます。

・安全性と性能の説明責任:規制当局が求めているのは、単なる規制への準拠された手順ではなく、製品の安全性と性能をガイダンスが求めるフレームワークに当てはめた手順とそのエビデンスです。

・品質文化の醸成:社長が要員に法規制を熟知させ、どうやって品質文化を醸成しているかを問われます。

 

ISOとの決定的な違いは?

FDAは効率的に査察を進めるために、品質室システムの重点的に査察するべき領域を統計データに基づいて特定しています。

2026年2月2日に公布されたFDA査察官向けの査察ガイドでは、具体的に次の6つの領域とOAFR(Other Applicable FDA Requirement)が示されています。

 

  • マネジメントオーバサイト
  • 設計管理
  • 製造及びサービス
  • 変更管理
  • 購買管理
  • 測定、分析、改善 
  • OAFR
  • MDR (Part803)
  • CAR (Part806)
  • Tracking (Part821)
  • UDI (Part830)

査察ガイドでは、特に品質不良の根本原因が設計管理にあることが示され、業界向けに「医療機器開発のあるべき姿」を示すガイドラインを提供しています。このガイドラインの存在こそがISOとの大きな違いのひとつです。

弊社が行うセミナーでは、必ずこのガイドラインをベースに解説しています。

なお、近年、特にプロセスバリデーションへの対応が重要視されています。

ISOにはない設計移管を含む工程設計やプロセスバリデーションは、日本のメーカーにとって課題となっており、FDAの視点での改善が求められています。

GAP監査でISOとのギャップを確認

もっとも重要なのは、監査員の力量を知ること

クオリス・イノーバでは、FDAの要求を満たすための改善の動機を得るためにGAP監査を推奨しています。

GAP監査を行うことで、現状の品質システムとQSRの要求事項とのギャップが数値化されます。つまり、GAP監査はFDA模擬監査に相当します。しかし、ギャップが数値化されることよりも、もっと重要なのは監査員の力量です。

FDAの本質的な要求を理解し、企業の発展につながる「ものづくりの本質」を見抜くためには、医療機器開発のライフサイクル全般に深い知識があり、品質改善の豊富な経験者が必要です。

また、認証機関やアメリカのコンサルティング会社だからといって適任とは限らないため、実際に御社に来るであろう監査担当者の力量とバックグラウンドを確認することも重要です。

なお、QSRではコンサルタントの評価が義務付けられているため、その評価結果をエビデンスとして記録する必要があります。

査察準備を成功させるには?

FDAの査察準備を成功させるためには、ISO認証を取得している企業であっても、まずはFDA規制の本質を理解する必要があります。

 

そのためにクオリス・イノーバでは、豊富な査察経験とGEシックスシグマ・ブラックベルトの知識を活かして、次のようなセミナーでFDAの要求事項を明確に解説しています。

 

 

  • 設計管理
  • CAPA
  • プロセスバリデーション

 

 

また、FDA査察の経験が豊富なクオリス・イノーバーならではの監査チェックリストを活用し、現状を数値化・改善後の目標を設定。さらに、CAPAの確実な運用によって、実際に目に見える改善を促進しています。

私たちは、まずFDAの要求事項の本質や原則を理解していただくことで、FDAの査察準備が企業の負担軽減につながると考えています。そのために品質向上やリスク管理のポジティブなツールとしてQSRの活用を支援。適切な規制対応を行わなければ、次回の査察で重大な指摘を受ける可能性が増えるだけでなく、医療機器の安全性にも影響を及ぼす可能性があるからです。

クオリス・イノーバーはFDA対応内部監査の専門家として、多くの実績を有しています。

100以上もの工場を持つGEヘルスケアのFDA対応コーポレート監査スタッフとしての経験や、GEシックスシグマ・ブラックベルトとしての品質改善プロジェクトの実績を活かし、監査後の是正対応も確実にサポートします。

査察対応プロジェクト

査察対応プロジェクトステップ
Step0 マインドを変える

グローバル市場で成功するには、アメリカ市場での成功が不可欠です。つまり、アメリカの規制に準拠することが求められます。これは単なる条件というだけではなく、グローバル企業として成長するための重要なステップでもあります。

しかし、アメリカの規制に対応するには、品質システムの大幅な変更が必要となり、それに伴い大規模なプロジェクトとして進めるための十分なリソースが求められます。このプロジェクトを成功させるためには、トップマネジメントの理解と支援が不可欠です。

品質システムを根本的に変革するには、トップが率先して旗を振り、組織全体を動かす必要があります。トップが積極的に関与しなければ、プロジェクトは途中で頓挫してしまう可能性が高くなるからです。

査察対応プロジェクトステップ
Step1 現状の把握

クオリス・イノーバでは、いきなりGAP監査を実施することはありません。なぜなら、監査する側とされる側のコミュニケーションが不十分なまま監査を行うと、双方にストレスが残り、監査が円滑に進まないからです。

そのため、GAP監査の前にトレーニングを実施し、次のような準備を行います。

  • グローバル用語の確認
    • 監査時に誤解を防ぐため、規制養護の意味を確認します。
  • 規制の本質を理解
    • 監査の目的やFDAの要求事項を正しく理解することで、監査の質を向上させます。
  • ファクトリーツアーの実施
    • 現場の手順を写真に収めてトレーニング時に紹介することで、監査対象の理解を深めます。
査察対応プロジェクトステップ
Step2 本質の理解

クオリス・イノーバでは、3日間のトレーニングのうち、最初の2日間をQSR基礎トレーニングとして実施します。このトレーニングには、経営陣や幹部社員を含む関係者全員に参加していただき、ISOの考え方から医療機器業界の視点へと意識を変革することを目的としています。

組織全体の意識改革なしに、プロジェクトの成功は見込めません。
そのため、このトレーニングでは以下のポイントを重点的に学びます。

  • 国際的な用語の定義
    • 監査時の誤解を防ぐために、共通の言葉を正しく理解します。
  • 規制・規格の本質の理解
    • 規制や規格をしっかりと理解し、適切な対応ができるようにします。
  • GAP監査時のコミュニケーションエラーの排除
    • 監査時の認識のズレをなくし、監査がスムーズに進められるようにします。
  • FDA査察時の誤解による指摘を防ぐ
    • 事前に正しい知識を身に付けることで、査察時のリスクを軽減します。
査察対応プロジェクトステップ
Step3 現実の理解

FDA QSR(品質システム規則)とISO QMS(品質マネジメントシステム)の違いを確認し、「Step2」で学んだ知識を実際の現場で確認することで、知識をより深い理解へと変えていきます。

また、クオリス・イノーバーの550以上のチェックリストを活用し、現状をスコア化することで、組織の品質システムの課題を明確にします。このチェックリストが、マネジメントチームを含む全員が現状を正しく理解するための指標となります。

これまでの平均スコアは20%未満です。
このように数値化することで初めて、組織の品質システムの現状を正しく理解できます。

査察対応プロジェクトステップ
Step4 改善作業

GAP監査で指摘された内容をプロセスごとに整理し、関係者全員が参加するプロジェクトチームで改善を進めます。

クオリス・イノーバでは、手順書や様式の提供は行いません。
なぜなら、他社の手順や様式をそのまま使っても、自社のものとして定着しないからです。さらに、形だけの導入では品質システムが崩壊するリスクもあります。

単なる規制対応ではなく、グローバル市場で競争力を持つための本質的なプロセス構築を支援します。

査察対応プロジェクトステップ
Step5 CAの理解

プロジェクトの進行中にCAPA手順を早めに導入・運用し、実際の業務の中でCAPAの重要な要素である「修正、是正、予防、直接原因、根本原因」を理解していただきます。

これらの理解がなければ、品質改善やシステム改善は実現できません。
問題が再発し、品質管理の本質である予防活動が効果的に機能しなくなるため、プロジェクトの意味が失われてしまうからです。

査察対応プロジェクトステップ
Step6 理解の確認

このステップでは、GAP監査のスコア(平均20%)が査察対応レベルの90%に達したかを実際のFDA査察に近いモックアップ監査の形式で実施します。

しかし、10ヶ月でスコアを90%まで伸ばすためには、相当なリソースを投入する覚悟が必要です。単なる形式的な対応ではなく、組織全体で品質システムを根本から改善する取り組みが求められます。