すでにISOを取得している企業のISOシステムを実際に確認させていただくと、「これで本当に認証を取得しているのだろうか」と疑問を感じるケースが少なくありません。
しかし「ISO9001」や「ISO14001」「ISO13485」といったISO認証をすでに取得している多くの日本企業は、ISOとQSR(FDA GMP)との違いが理解できれば、そのままシステムを再構築できると考えてしまいがちです。 方向性としては間違っていません。 しかし、ここに注意すべきポイントがあります。
ISO認証を取得する際に、認証機関やコンサルタントが作成したひな形をベースにしているため、要求事項の本質的な部分を十分に理解できていない可能性があるからです。
ISO監査は「お金を支払えば認証を得られる」という側面があります。
しかし、FDAは「アメリカ国民を守る」という明確な使命のもと、わざわざ外国に赴いて査察を行います。
この2つを同じ基準で考えるのは適切ではありません。
また、認証機関の監査が行われるたびに「やらされている」と感じている現場も多いのではないでしょうか。 同時に、ISOを運営している事務局側では「これで本当に品質がよくなるのか」と疑問を感じているかもしれません。
そのため、まずは「FDA QSR」の基礎トレーニングを通じて、要求事項の本質を深く理解できるようになる必要があります。
クオリス・イノーバは、「どうせやるなら会社にとってプラスになる仕組み作り」を目指し、企業の意識改革をサポートします。
また、100以上の工場を持つGEヘルスケアでFDA対応コーポレート監査スタッフとして経験した企業監査、およびGEシックスシグマブラックベルトとして積み重ねてきた実績をもとに、当社のセミナーでは、FDAの査察ガイドライン(QSIT)やガイダンスを活用し、FDA規制の本質や医療機器開発の重要ポイントをわかりやすくお伝えしています。
FDA QSRの要求事項の本質は、「医療機器の安全性」と「製品の品質」を確保することです。
FDA査察ガイド「QSIT」を読むと、FDAは品質システム上の問題箇所をよく理解していることがわかります。
たとえば、リコールの頻発や有害事象報告(MDR)の増加が見られた場合、FDAは「この企業では適切なCAPA(是正処置と予防処置)が実施されておらず、本質的な問題解決ができていない」と判断します。
私たちの経験でも、多くのケースでCAPAがうまく機能しておらず、マネジメントも無関心なことが、さらなる問題を引き起こしています。詳細に調査を進めると、多くの場合、設計段階での管理が不十分だったことが明らかになります。
このため、QSITは次の3つを重点的に査察するよう設計されています。
ISOの監査員が「システムの維持」を主眼に置いているのに対し、FDAの査察官は「なぜ品質不良が発生しているのか」という根本原因を問い続けます。
FDAはISO認証機関とは異なり、「アメリカ国民の命を守る」という使命を持つ行政機関です。
そのため、医療機器の不具合防止に焦点をあて、規制を補完するガイダンスを公開し、「こうあるべき」という具体的な指針を示しています。
このガイダンスには、FDAが求める要求事項や、医療機器開発における本質が凝縮されています。
FDAは、品質改善の効果的な手法としてCAPA(是正処置と予防処置)を非常に重要視しています。
適切に運用することで、問題の根本原因を特定し、それに基づいた是正措置を実施できるからです。
しかし、FDAは「CAPAを正しく理解している企業は少なく、期待される効果が十分に得られていない」と指摘しています。
FDAは、CAPAの実施状況から、企業全体の次のような状態を把握しています。
しかし、日本企業ではCAPAについての理解が浅く、多くの場合、「是正(CA)」と「予防(PA)」の違いさえ十分に認識されていません。
さらに、マネジメントが品質改善に関与していない場合もあり、これでは本質的な改善が進まないのも当然です。この状況を踏まえれば、FDAがCAPAを重視して査察を行う理由は十分に納得できます。
本質を十分に理解しないまま、「規制だから」「ISOの取得がビジネスにつながるから」という理由だけで、品質システムを運用している企業にとって、さらに厳しいFDAの査察を進めることは担当者の負担が増えるだけのものになってしまいがちです。
しかし、品質不良が社会問題に発展した場合、大企業でも撤退や倒産に至る可能性があるのは事実です。
FDA QSR要求の本質を正しく理解することは、会社が製品品質に対する考え方を見直し、リスク管理を行うための大きなチャンスでもあります。